「根源的な世界への道筋」
大長智広(愛知県陶磁美術館 学芸員)
自然界においては、ほとんどのものが結合体として存在する。生物では核の位置の違いが細胞個々の構造を決定し、その結合によって動物や植物が形成される。また、雪などの多結晶は単結晶の規則的配列が導く複雑で美的な結合体である。
このような自然界との共通性を亀井洋一郎の陶は有している。亀井は磁器の鋳込みで建築的強度を持つ立方体を制作し、それを基本単位とする。そして垂直、水平の力学に従うことで複雑な法則性を持つ幾何学形態を生み出している。その作品構造を見ると、建築的強度は植物に、幾何学的展開は結晶に類似している。
やきものは素材の特性や重力、焼成など制作上の制約が多くあるが、亀井はそれを受け入れつつ、造形として解決すること、さらに紛れもない「陶」として成立させることを目指している。このような仕事の過程で、亀井ははからずも自然界の構造に触れることになり、なおかつそれは陶としての根源的な世界への道筋をも示しているのである。