「うつわの構造は、実用性の有無に関わらず本来的にやきものの根底に存在しているのではないか。」こうした自らの推測を起点とし、'01年より継続して展開を進めている作品Lattice receptacle(ラティスレセプタクル)。その制作に際して私が最初に向かい合ったのは、戦後モダニズムによって既に閉じられていた容器性の空間に孔を穿ち、今日的視点で開く方法を考えることだった。言い換えればそれは、うつわとオブジェという表現形式の隔たりを「私はどのように共存させ得るのか」ということでもある。このような観点において本シリーズの展開は、やきものにおける空間の開き方の考察といえるだろう。
もし、やきものに空間的伝統があるとするならば、それはどのようなものだろうか。私は造形のスタディを行う上で、内外を区分する境界の設け方や、それに伴う内的空間の在り方を容器性の基調としてきた。しかし近年、それとは別様の容器性へのイメージ、例えば全体的な雰囲気や佇まい、空間の気配などに意識が向くようになった。今はまだ明確に把握できていないが、差し当たりはそれを様相と言い表している。
亀井洋一郎